正直に言おう。僕は歯科オタクだ!
自分の腕をもっと磨きたくて
開業を決意した
「自分の技術を磨きたかったから」の一言につきますね。
歯科医の働き方は、いくつか方法があると思います。たとえば大学病院で働く。これは学問・研究と診療を両立できるのが特徴ですね。私も大学院生時代は、診療の傍ら、独自で特許を取得した経験があります。
もう一つは、民間の歯科医院に勤めること。これは多くの歯科医師が経験している働き方でしょう。私も大学院から、民間のクリニックという流れを経ています。
ただどちらにも言えるのは、組織に守られた状態であること。そこには独自の文化や、しがらみなどが付き物です……。そのような状態に身を置いていると、次第に「自分らしい診療とは何か」という自問も芽生えてきます。僕にとって、その突破口が「開業」という選択だったのです。
横浜のクリニックに勤めていた頃に知り合いましたね。
僕は使う道具や材料に、人一倍気を遣うタイプなんです。だから営業担当に求めるのは、「こんな道具あるだろうか?」「こんな材料あるだろうか?」というような多少無茶なリクエストでも的確に応じてくれるかどうか――。それを実現してくれるのが、彼(弊社営業担当)だったんですよ。
そんな性格を知ってか、次第に彼のほうから「先生、こんな材料が登場したよ!」と提案してくれるようになったりもして。そこから意気投合し、お昼の休憩には一緒にご飯を食べる仲にまで発展しましたね(笑)。
自己研鑽について熱弁する小澤氏。自分の技術を磨くうえで、行きついた答えは「開業」という選択だった。
生まれ育った場所で開業がしたい
一緒に昼ご飯を食べるような仲なので、開業に踏み切る前から少しずつ相談はしていたんですね。だからいよいよ独立に向けて始動するときも、「じゃあ、よろしくね!」と、ものすごくカジュアルでした(笑)。彼も、すぐに動き出してくれたから心の準備はできていたんでしょうね。
ありました。それは何かというと、「生まれ育った場所で開業したい」という願望です。 いま医院を構えている文京区小石川エリアは、僕が生まれ育った街なんです。そこに住む方々への恩返しとして、歯科医院を開業したいと考えていました。長年住んでいる方にとって、「同じ出身の人が開業したクリニック」として親近感を持っていただけると思います。それから僕は小児歯科も積極的に行っていますが、子どもたちが治療を通じて「こういう仕事ってかっこいい」と感じてもらいたいんです。そして、その子らが大人になったとき、地域で活躍するようになってくれればこれほど嬉しいことはない。
そうなんです。ただ小石川エリアのなかでも特に千石駅周辺に絞っていたため、不動産探しには時間がかかりましたね。いまの不動産を御社の担当が見つけてくれたときも、大急ぎで連絡をくれました(笑)。あのときは嬉しかったです。 おかげさまで当初の構想通り、いまでは地元の方々にとても愛されているクリニックとして続けられています。ちなみに以前勤務していた茅ヶ崎、小田原、横浜で診療していた患者さんがわざわざ通ってくださるケースもすごく多いです。
生まれ育った街で開業する夢を叶えた小澤氏。次の夢は、仕事を通じて子どもたちの「よい手本」となること。
小澤先生なら「なんとかしてくれる」
という絶大な安心と信頼
「小澤先生なら、なんとかしてくれる!」という厚い信頼を寄せてくれている点ですね。 たとえば、歯周病のせいで今にも抜けそうな歯があるとします。他の歯科なら抜歯を余儀なくされるほどひどい状態。だけど僕の所に来る患者さんは「どうにかして残したい」とリクエストをするんです。 たしかに考課試験では、抜歯が正解です。しかしどれだけ歯根が見えていようと、患者にすればまだそこに「歯がある」。この狭間でいかに寄り添えるかが、医師の信頼に繋がるんだと思います。道は一つだけじゃないんですよね。可能性の「道」を患者さんにいくつ提示できるかが大切です。
医師は患者さんから、「先生」と呼ばれることが多いですよね。私はこの言葉にあぐらをかいてはいけないと常に意識しています。 「先生」という言葉に注目してみましょう。先を生きる、と書いて先生ですよね。つまり患者さんの手を引いて、正しい道へ導くことが大切なんです。 さまざまなプランをきちんと提示し、それぞれのメリット・デメリットを丁寧に説明した上で、患者さんに理想の道を選んでもらう。そのうえで先生は、最善を尽くしてゴールへ導くのが理想です。だから医師と患者の関係性には、徹底的にこだわりたいですよね。
小澤先生なら「なんとかしてくれる」。そんな厚い期待に応えるため、常に真摯であり続ける。
「こだわり」の原点は、オタク気質である
ははは(笑)。たしかに、ユニットとCTのメーカーには強いこだわりがありましたね。 歯科とは端的に、「レントゲンで診断して、治療すべきところを削る」ということです。当たり前ですが、正確な診断がつかなければ治療はできませんよね。あるいは治療する際にユニットにトルク(パワー)がなければ、きれいに削れませんよね。摩擦に対してトルクが追いつかずに止まってしまえば、歯に余計なダメージを与えるんです。 そしてなにより僕のところに来る患者さんは、歯が抜ける寸前の状態、ひどい虫歯の方が多い。だから「最後のチャンス」「ラストトライ」に賭けてくる人が多いんです。だから機材は必然と信頼度の高いものが欠かせませんね。
僕の趣味・特技の話になるんですが、プラモデル製作とジオラマ製作が源泉だと思っています。 たとえば、戦車のプラモデルを製作するとしましょう。当然ですが、まずは同梱されている説明書通りに作るのが基本になります。すると正しくキレイな車体が完成しますよね。 そのうえで僕はさらに、細部にこだわっていきます。リアルな戦車というのは無限軌道(キャタピラ)に泥がはねていますし、車体に無数の傷や汚れが付き物です。 つまり、「説明書通りにプラモデルを作る」という大局的なことから、「泥はねや傷にこだわる」という局所的な部分にまで魂を込める、というのが僕なりの「こだわり」の本質になります。
院内には、小澤氏こだわりの水槽が並ぶ。ジオラマについては「飾りたいけど、メンテナンスが大変だから……」と、悩んでいる最中だ。
強烈なリクエストにもきちんと応える
ヨシダタロウの担当者
たしかに僕はオタクですね! プラモデルやジオラマは手先の器用さが試されますが、歯科医療にもその特技が活かされているかもしれません。さきほど紹介した、歯がグラグラで今にも抜けそうな患者のときは、その力がより発揮されます。診断によっては抜歯を避けて、接着ブリッジで繋ぎ留めることも厭いません。もちろん時間はかかるし、手間もかかります。そんなときに、プラモデルやジオラマ製作での根気や粘り強さが活かされているかもしれませんね。ちなみにその患者さんは、いまでもブリッジで生活できてますよ。 先ほどお話ししたように、プラモデルは説明書(=基本)がなければ正しく完成しません。それは治療にも同じようなことが言えるんです。歯科医療の基本は、これまでの研究成果や知見を基に治療を実施することです。つまりそれらの基礎をきちんと理解し、患者さんにわかりやすく伝え、忠実に施術するのが大前提となります。しかも僕は年齢的にも業界ではまだ中堅です。決してベテランではない。そういう意味でも、基本に忠実であることを強く意識しています。
うん。彼も相当の凝り性でしたね(笑)。
たとえば機材についても、メーカーによっては安かろう悪かろうなものもあります。もちろんいろんな事情や価値観をもった医師がいますから、それらの機材を否定するものではありません。
ただ僕の担当者は「機材のこだわり」が強かった。幸運だったのはその価値観が合致したことですよね。彼から聞いたんですが、他の医師が安価な機材だけで賄おうとした際には、「ほんとうにそれでよいですか?」と念を押しているそうです。高額だけれども信頼度の高い機材の必要性を丁寧に説明して、選択肢に加えてもらうよう心がけていると言っていました。
そういった真摯な姿勢が、ヨシダタロウさんの持つ情熱や信頼度の高さにつながっているんだと思いますね。
小澤氏が特にこだわったのがユニットとCT。いずれも「デンツプライ シロナ」製。
大和郷幼稚園卒業。2010年、鶴見大学歯学部卒業。2014年、鶴見大学大学院歯学研究科卒業。2015年、鶴見大学歯学部有床義歯補綴学講座研究員。2017年、医療法人社団翔優会 光澤歯科医院を経て、2021年におざわデンタルクリニック院長に就任。